レーザー干渉測長計の応用
1. まえがき
レーザーを用いた測定法は、長さ、位置検出、振動、角度、速度、外観、形状、面粗さ等、様々な分野で利用されている。
なかでも、レーザー干渉測長計の普及はめざましく、研究的な目的のみならず、生産現場(例えば、工作機械の出荷検査等)においても、必須の計測器となりつつある。また、近年のLSI等に代表される電子部品製造設備においては、極めて高精度な位置決めを要求されるため、フィードバックの位置検出器としても利用されている。
レーザー干渉測長計を用いると、移動距離や移動姿勢(ピッチング、ヨーイング、真直度等)の高精度な測定を、非接触に、かつ比較的容易に行うことができる。
NSKでは、位置決めテーブルの最も重要な要素である“ボールねじ”や“直動案内軸受”を製造、販売している。このため、ボールねじや案内系と機械の位置決め性能の関係把握、あるいは加工精度向上のための製造設備の測定等、ボールねじのソフト・ハード両面にわたってレーザー測長計を利用し、多くの改善をはかってきた。また、レーザー測長計を応用した自動連続リード測定器を開発し1)、実用化している。
以下、これらの測定例について説明する。
2. レーザー測長システム
NSKで使用しているレーザー測長システムは、ヒューレット・パッカード(H.P.)社製の5526Aシステムである。このシステムは、ゼーマン効果による二周波数レーザーとAC干渉計を応用した光ビート計数方式(光ヘテロダイン方式)を特徴とし、このため、光の減衰に対する安定性が高く、測定分解能も高い。また、レーザーチューブは、ウォームアップを必要とせず、長寿命である等の利点もある。このシステムでは、長さの測定を基本とし、角度、真直度の測定もできる。ここでは、二周波数レーザーによる測定原理2)について概要を述べる。
2.1 長さの測定
レーザー測定の基本となる長さ測定の原理を図1に示す。図1で f1、f2 はゼーマン効果により発生する二つの光成分の周波数であり、これらは互いに直交する偏光面を持つ直線偏光で約1.8MHzの周波数差を持っている。レーザー光源から出た二つの光成分は、参照信号用と測定用に分離される。干渉計は、この直交する二つの偏光に対し、一方を反射、他方を透過させレーザー光源からの光をf1、f2 の成分に分離するとともに、反射鏡からの反射光を再び合成する。長さ測定においては、図1に示すように周波数 f1 の光成分は測定反射鏡へ、f2 の光成分は固定反射鏡へそれぞれ分離されている。ここで測定反射鏡がレーザー光線軸上を移動すると、測定用反射鏡からの反射光はドップラー効果による周波数シフトを受け周波数が f1±Δf に変化する。この時の変分
±Δf は測定用反射鏡の速度および方向により決定され、その値はレーザー光の波長を λ
とすると測定反射鏡の ±λ/2 の移動に対し ±1 カウントとなる。従ってこの周波数シフト分 ±Δf を累積計数すれば測定用反射鏡の移動量が計測できることになる。ところで f1、f2 の光成分は変調フィルタを通すことにより両者の周波数差によるうなり周波数すなわち光ビート周波数が検出される。従って、測定用反射鏡の移動成分
±Δf は参照光の光ビート周波数(f2−f1)と測定光の光ビート周波数(f2−f1±Δf)との差により求められる。実際の計数においては参照信号、測定信号共にダブラーを通し2倍の周波数として計数されるので、本システムの測定単位は
λ/4 となる。なお、表示器では λ/4 表示、mm 表示および inch 表示がスイッチにより選択でき、最小表示は各々
0.1mm、1×10-5inch である。また、本システムでは分解能10倍拡大装置が用意されておりこれを使用することにより、最小表示単位を
λ/40、0.01mm、1×10-6inch に設定できる。

2.2 角度、真直度の測定
角度測定の原理を図2に、真直度測定の原理を図3に示す。これらの測定系においては、干渉計あるいは反射鏡のレーザー光線方向の移動に対し、 f1、f2の光路長変化は等しく、干渉計と反射鏡間の相対的な角度変化あるいは横方向の動きによって生じる f1、f2両光路長差の変化分のみを検出する差動測定が行なわれる。角度測定では両光路は2.0625
inchの間隔に設定されており、光路差変動をinch表示にて測定するとinch表示の最小表示1×10-5inchの光路長差の変化に対する角度変化 Δθは次式で与えられる。

この結果から角度は秒単位で直接表示することができる。また分解能10倍拡大装置を使用することにより0.1秒単位の測定が可能となる。
次に真直度測定においては、干渉計あるいは反射鏡の横方向の変位 ΔX に対し光路長差 Δl は ΔX/36 となるように設定されている。従ってこの測定では分解能36倍拡大装置が使用される。このときの最 小表示は 、0.1μm または 1×10-5inch となる。

3. NCフライス盤の位置決め精度
NC工作機械の位置決め精度に対する考え方が、1968年にNMTBAにより提案された3)。この方法は、従来のように標準尺等を使う方法では極めてめんどうであるが、レーザー測長計を使用することにより容易に行うことができる。
3.1. 位置決め精度の考え方
NMTBA方式の位置決め精度は、次のように定義される3)。今ある1点における位置決め精度は、
・・・・・・・・・(1)
ここで
- A: 任意の点における位置決め精度
: 目標値と実測平均値との差
- 3
: 実測平均値の両側に位置決めされると推定される範囲

全位置決め領域にわたるAの最大、最小の幅(±)をもってシステム精度、3 の最大値を繰り返し精度と呼ぶ。(図5参照)また、両方向からの位置決め誤差の平均値 、 の差をロストモーションと呼ぶ。
・・・・・・・・(2)
3.2. 位置決め精度の測定例
ここでは、NCひざ型立フライス盤の位置決め精度の測定例のうち、特徴的な例を示す。
図4に、測定の概念図を示す。

図5、図6、図7は、左右各方向、及び両方向の位置決め時の測定結果をNMTBA方式に従って整理したものである。この測定結果は、機械の実測温度をもとにして20°Cに換算してある。
この図より、システム精度は、±30 程度である。これらの精度に影響を与えている原因について考察する。この結果をみると、2つの大きな特徴がみいだせる。(i)指令位置が長くなるに従い累積誤差が増大する。(ii)指令位置300mm付近に変曲点がある。
(i)の原因は、ボールねじの温度上昇である。
この測定時、室温は機械温度より2°C高く、更に数回の慣らし運転の結果、ねじ軸温度は、室温より1°C程度高くなっている。この影響を の値から取り除いた結果を、図5、図6に破線で示す。
(ii)の原因は、ピッチング誤差によるものである。ひざ型フライス盤の場合、テーブルは、両端にくるとベッドからオーバーハングし、ピッチング誤差を生じやすい。図8にレーザー測長計で測定したピッチング誤差を示す。この機械では、原点付近の姿勢精度の劣化がみられ、0〜300
mmにおいて、大きなピッチング誤差が生じている。このピッチング誤差の影響と前述の温度上昇の影響を取り除いた結果を図5、図6に1点鎖線で示す。このように、この機械の位置決め精度には上述の2つの誤差要因が、大きく関与していることが明らかである。
次に繰り返し精度について考えてみよう。
図5、図6によれば、0〜300 mm付近と、300〜700mm付近では、繰り返し精度に1.5〜2倍の違いがある。これは、姿勢精度(ピッチング精度)の劣化がみられる原点(0
mm)付近での反転の際に、不安定なピッチングのズレを生じ、それが、その後300 mm付近まで回復しないため、その繰り返し精度が悪化したことによるものであった。
この現象は、ロストモーションのバラツキとしても現われる。図6にロストモーションの結果を破線で示した。しかし、これは、3.1で述べたように平均値である。図9に各点の1往復毎のロストモーションのバラツキを示す。0〜300
mm付近で大きくばらつき、位置決めが極めて不安定であることがわかる。
繰り返し精度には、ねじ軸の温度上昇の影響もあらわれている。7回の測定においてねじ軸は、0.35°Cの温度上昇(3 /700mmの熱膨脹)が生じ、このため、長さに応じて、繰り返しのばらつきが大きくなっている。
図10には、同様な構造をもつマシニングセンターの実測例を示す。この場合も、精度劣化の主原因は、テーブルのオーバーハングによるピッチング誤差であり、前述の例と同様に、繰り返し精度にも影響を及ぼしている。繰り返し精度には、原点付近の不安定さが影響しており、測定データからその部分を除くと、図11のように、繰り返し精度は、1/5以下となる。
このような測定の結果、テーブル案内系のスキマ調整、加工の原点をテーブルがオーバーハングしない位置にとる、適当な慣らし運転時間をとるなどの対策を行ない、その加工精度を大幅に改善することが可能となった。なお、NMTBAでは、停止位置指令は、周期的誤差を見逃さないように、ランダムな数値で与えるように提案しているが、前述の例では、一定距離ごとの指令を与え、かわりに、何種類かの距離指令で測定を行っている。
3.3. ロストモーション
図12に、あるNC機械のステップ送り(10μm/1step)を行った場合の例を示す。図のように、反転時に20μmの遅れが生じる。従来このような静的なロストモーション量をバックラッシュとして補正を与えていた。ところが、同じ機械において、送り速度を増やすと図13のようにロストモーション量が負(行き過ぎ)となる。これは起動時において、指令に対するテーブルの遅れとともに、停止時にオーバーラン4)が生じることによる。図14に、遅れとオーバーランの状態を力学的にモデル化して示した。このように遅れも、オーバーランも、力学的には同一の関係にある。
今もし、遅れのみを生じオーバーランが生じないとすれば、図15に示すようになる。しかし、停止時にオーバーランがあれば、図15のように、0−1では、遅れを生じたのち、2−3においては進みすぎを生じる。このため、その往復のロストモーションは、図の1点鎖線と2点鎖線の差となる。
・・・・・・・・・(3)
ここで
このように、ΔDよりΔORが大きくなるとロストモーションは負となる。
さて、テーブル案内系を簡単なバネマス系と仮定し図12の実測値をもとにして、送り速度とロストモーションの関係を求めたものと、実測結果との比較を、図16に示す。
このように、ロストモーションも送り速度の影響を受けるから、実際の加工速度に合った補正を与えれば加工精度を向上させることが可能となる。


4. ボールラックの実機測定
ボールラック5)は、ウォーム&ラックを転がり化した位置決め要素であるが、ボールねじに対し製造上の長さに制約を受けない、慣性モーメントが小さく加減速に要する動力が小さい、軸の自重たわみを考慮する必要が無い等の長所を持つため、長尺の大型NC工作機械に多く使用されている。ところで、ボールラックではその取付け精度が機械のリード精度および位置決め精度に影響するため、ラックの取付けには一定の精度が必要となる。ここでは標準的な取付け作業のなされた工作機械でのリード精度および位置決め精度の測定例を紹介する。
測定を行った工作機械の概要を表1に示す。
4.1. リード精度
この測定方法は、ウォーム軸にロータリーエンコーダを取付け、これより出力される1回転信号に同期させた機械の移動位置を連続的に測定するものであり、機械は、一定の送り速度で運転される。
測定結果をNC横中ぐり盤について図17に、NC旋盤については図19に示す。ボールラックのリード精度として、その累積代表リード誤差(累積リード誤差の代表直線の目標に対する誤差)と変動(累積代表リード誤差直線に対する実測値のバラツキ)を求めると表2に示す値となる。(図29参照)
表2に示す値にはピッチング、ヨーイング等、機械側の誤差要因も含まれているが、この値をすべてボールラックの精度とみなしても、ボールねじの超精密級から精密級の精度6)に相当する。

4.2. 位置決め精度
位置決め精度のシステム精度は、前述のリード精度により表わされているので、ここでは、その繰り返し精度について議論することとする。測定方法は、NMTBA方式に合わせて、7回の繰り返し測定を行ない、各測定点の3 を求め位置決め繰り返し精度を評価した。測定結果をNC横中ぐり盤については図18、NC旋盤については図20に示す。ただし、NC横中ぐり盤では、7回の測定に1時間を要し、この間の気温の上昇が1℃、それにともなう機械温度の上昇が0.4℃存在し、これによる熱膨脹は、全ストローク8mに対し約40 となる。このため、この機械温度上昇による誤差分は、実測値から補正した。
この結果から、両機の位置決め繰り返し精度を求めると次のようになる。
| NC横中ぐり盤: |
±3 max、
= ±23 max |
| NC旋盤: |
±3 max
= ±22 |
NC旋盤では、測定時間が短いこともあり、横中ぐり盤のような気温上昇による誤差を補正していないが図20にも、典型的な熱変位誤差の影響(位置決め位置に比例して繰り返し精度が低下する)があらわれている。
5. 熱変位測定
位置決め精度という言葉は極めて広く使われていながら、それらをどう定義するかは必ずしも正確に規定されていない。あえて云えば米国工作機械工業会の提案10)が最も一般的に使われている。
この考え方は、任意に定めた位置に位置決めを繰り返し(7回以上)、そのデータから分散σを求め平均値Xのまわりに±3σのばらつきで位置決めされると考え の占める領域の最大・最小からシステム精度を定義し、±3σを繰り返し精度と定義するものである。この方法は一見合理的にみえるが、実際は誤差が正規分布する場合はよいが何らかの有意な意味をもつ場合等は全く誤まった繰り返し精度となる。また、この評価だけでは誤差の要因分析は困難である。
筆者らは別にテーブルの動きを連続的に測定し、そこに現われる周期的パターンから誤差要因を評価する手法をとっている。
5.1. 工作機械の位置決め精度測定
ある工作機械において(セミクローズド制御)機械精度をリニアスケールにより測定したところ、大きな誤差(30〜40μm/240mm)が計測された。この原因をさぐるためレーザ測長器を使って位置決め精度、姿勢精度を測定した。各測定点を図9に示す。
5.2. 測定結果
測定結果を図22に示す。図22で強制冷却を行なわない〔A〕においては、20回の往復駆動では熱変位は飽和状態に達していない。この場合の最終的な熱変位量は、図22の熱変位上昇特性より、220 /m程度と推定される。この時の往復回数は90回前後と考えられる。
次に強制冷却における熱変位特性については、冷却水流量および平均送り速度と熱変位量の間の関係をまとめると表4のようになり、おおむね次の関係が認められる。
平均送り速度/冷却水量
熱変位量
これは平均送り速度が等しい場合熱変位量は冷却水量に反比例することを意味しており、この関係を送り条件の等しい、〔A〕、〔B〕に当はめると、非冷却時の放熱能力を冷却水量に換算し評価できる。換算流量をQとすれば
Q = 0.6〜0.65 (l/min)となる。
いずれにしても送り速度5.01m/minの駆動条件においては、中空軸に7.5l/minの冷却水を供給することにより、非冷却時の11〜12倍の冷却効果が得られることがわかった。
ここでは、ボールねじの熱変位測定について示したが、この結果は、図22に併記してあるように温度上昇特性としてみることもできる。この場合、0.1°C程度の温度変化も容易に識別でき、ねじ軸の温度分布等の評価においては、従来の温度測定等の方法に比べ飛躍的な測定精度の向上が可能となっている。
6. ボールねじ自動リード測定機
ボールねじは、工作機械などの位置決め要素として重要な位置を占めており、その高精度化への要求はますます高まっている。この要求に応えるためにレーザー測長計を利用し、ボールねじのリードを自動的に測る測定機を開発、実用化し1)、超精密ボールねじの精度向上に貢献している。

6.1. 測定機の構造と特徴
図25に測定システム図を示す。被測定物は両センターによって支持され全長3mの測定ができる。またチャックと3点ローラレストにより更に長い測定を継続して行なうことが可能である。往復台Aは被測定物のねじリードに合わせてチェンジギヤを組み、往復台の下部に取付けられている親ねじにより移動する。浮遊台D上には自動調心ホルダーC(ナット歩み測定)か、一対のフィーラE(軸単体測定)が取付けられている。
往復台の移動と被測定物のリードに差があると浮遊台が、その分、軸方向に移動する。浮遊台には特殊直角三面鏡Fが取付けられており、レーザー測長計により、浮遊台の移動量を測定する。レーザー光源を出た光は外部干渉計を通り、直角三面鏡にて反射しコーナーキューブGで戻り再びレーザー光源の受光部に入る。こうして浮遊台の移動量をエンコーダHからの同期信号に従って取り込みディスプレイするとともに、カリキュレーダーでリード誤差としてプリントアウトする。更にD−A変換器によりアナログ信号としてレコーダーに記録される。これらにより、リード誤差を超精密に自動測定できる。この測定器の特徴は、以下に述べる。
- (i) 光学系に直角三面鏡を用いそれらのコーナーポイントを被測定物の中心にもっていくことでAbbeの原理の置換として姿勢変化による測定誤差を除去している。
- (ii) 軸単体のリード測定は同一ねじ面の180°離れた対向位置に2ケの測定子を当て、ナットの歩み測定は自動調心ホルダーを用いて、被測定物の曲がり、たわみによる測定誤差の1次量を消去している。またステディレストにより動的に測定されている被測定物の真直度を保持し、両センターにかかる負荷を減少させ、ねじ軸の軸方向安定化をはかっている。
- (iii) 主軸スピンドルのスラスト振れを重視して、主軸台には円すいころ軸受を前後に配置してラジアル負荷を受けさせ、スラスト方向は入念にラップ仕上げされた平面と鋼球によって受けさせる。そのスラスト振れは0.3μm以下である。

6.2. 測定精度
本測定機でボールねじ軸(全長1680mm)4本の累積リード誤差を各4回測定した結果、その繰り返し性は最小二乗法による代表直線(累積代表リード誤差)で最大0.73μm/1680mm
であった。
また、本機とCarl Zeiss Yena社製 ULM-3000で測定した結果を図27に示す。これらの結果はかなりよく一致している。
7. レーザー測長とミニコンによる自動測長システム
レーザー測長計で測定されたデータをミニコン等を利用してデータ処理する方法は、数多く行なわれている8)。また、H.P.社では、マイコンとレーザー測長計とによる自動測定システムも市販している。
NSKでは、独自にミニコンにより測定データを自動的に処理するシステムを開発し、使用している。
図28に、このシステムの基本構成を示す。
レーザー測長計により測定されたデータは、回転角(例えば、送りねじの回転角)検出器や、位置指令信号等により出される信号にしたがって、ディスプレーや、ミニコンヘ入力される。ミニコンは、キーボードから使用者が指示した命令に従がって、データを誤差量に変換する。ミニコンは、取込まれたデータを処理するとともにディスクに保存したり、CRT(グラフィックディスプレー)上や、プロッタ上に図形出力したり、プリンター上に処理結果を出力する。
このように、オンライン処理することにより、データの内容を確認しながら、測定を続けることができるので、問題点の把握や測定全体の精度を高めることができる。
ここでは、この測定システムの1部であるLAMS(Lead Accuracy Measuring System)について紹介する。
これは、テーブル移動中の位置誤差や送りねじの精度を測定処理するシステムである。
この概要は、次のとおりである。
- (i) 送りねじ等の一定回転角(標準1/100rev., 最小1/500rev.
以下、任意設定可能)ごとにデータを採取し、保存する。
- (ii) JIS、ISO等のボールねじリード精度規格に相当するデータ処理、及び図形出力
- (iii) データ処理後の種々の図形出力、およびズームミング、スムージング等の機能によるデータ内容の正確な把握
- (iv) 誤差の統計的処理(平均、標準偏差 etc.)
- (v) 誤差の周期的変動成分の解析、およびシミュレーション
このシステムは、全て対話型になっており、ミニコンから出される質問に使用者が答える形で、解析を進めることができるようになっている。
図29に、このシステムによる図形出力例を示し、あわせてJISの新しいリード精度規格の考え方を示す。このシステムでは、これらの規格処理を自動的に行うことができる。
図30にあるX−Yテーブルの送り精度誤差を測定した例を示す。図30には全体的な誤差要因を判断するために高調波成分をカットした結果と、ピッチングの測定例の比較を示す。ピッチング誤差の図には、ピッチング誤差(秒単位)とそれにより生じる送り誤差( 単位)をそれぞれ縦軸の目盛として表示している。この図より、大きな波の誤差成分がピッチングにより生じていることがわかる。
図31に図30のデータの1部を周波数分析した結果を示す。また図32には、図30の1部を拡大したデータと、それらの各周期成分を分離再現したものを示す。このデータでは、送りねじ1回転1山と1回転3山成分が特徴的な周期性成分である。1回転1山成分は、送りねじのよろめき成分および回転振れ成分が主原因であり、1回転3山成分は、送りねじの支持軸受のスラスト振れが原因であった。
これらのシステムは、ねじ加工の精度向上のためのリード測定、解析にも使われており、更に6章で述べた自動リード測定機と結合し、自動リード測定処理システムとしても使用されている。


8. むすび
機械の位置決め性能の計測あるいは位置検出のために、レーザー測長計は、極めて便利な計測器である。
NSKでは、位置決め装置の最も重要な要素であるボールねじの精度測定、その製造機械(例えば、ねじ研削盤等)の精度測定および生産技術向上、更にボールねじを用いたテーブルの位置決め性能向上のための技術開発等を目的として、レーザー測長計を利用してきた。ここではそのいくつかを紹介した。
レーザー測長計の利用に対しての一助となれば幸いである。
参考文献
- 1) 吉本、丸山他:レーザー干渉ねじリード大形測定機の実用化、昭和54年精機学会秋期大会前刷、377.
- 2) Y. H. P. テクニカルノート
- 3) NMTBA:DEFINTION AND EVALUATION OF ACCURACY AND
REPEATABILITY FOR NUMERICALLY CONTROLLED MACHINE TOOLS
- 4) 井川直哉:位置決め機構の力学的解析、41-3 (1975)、213.
- 5) 笠井、大沢:ボールラックの工作機械への応用、NSK BEARING JOURNAL 636 (1977)、33.
- 6) NSKボールねじ力タログ
- 7) 二宮:ボールねじの摩擦と温度上昇、NSK BEARING JOURNAL 637、(1978)、9.
- 8) 沢田、木村:NC機の位置決め精度の測定について、機械学会誌 75-637 (1972)、246.
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